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科学技術ニュースの伝え方の難しさ [科学技術]

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軌道エレベーターの基礎実験が始まる:トドのつまりは・・・ V2:So-netブログ

宇宙輸送船「こうのとり」6号機で、軌道エレベーターや宇宙ごみ除去の基礎実験が行われることは、私のブログでもご紹介したことがある。

宇宙ごみ除去実験は失敗 「こうのとり」6号機  :日本経済新聞

その宇宙ごみ除去実験が、テザーと呼ぶワイヤが伸ばせず、失敗したというニュースを聞いて、ちょっと残念ではあったが、私にとっては、それだけのことではあった。

実験失敗と報じられた「こうのとり」6号機の真実 宇宙ステーションへの物資輸送、100%成功してるのは日本だけ | JBpress(日本ビジネスプレス)

ところが、その後、こちらのニュースを読んで、「こうのとり」6号機自体が、すべて失敗に終わったかのように伝わってしまっていることを知った。

私自身は、宇宙輸送船「こうのとり」6号機というのは、まずは国際宇宙ステーションに物資を届けるのがメインタスクであり、こちらについては今回も大成功だと思っていたから、これは予想外。

国際宇宙ステーションへの物資輸送に関しては、日本のロケットのみが一度も失敗しておらず、最も重要な物資輸送は、日本に任される状況となっているぐらいだ。

ロケットの打ち上げは物凄く高くつくので、「こうのとり」では毎回、各所から募集した中から有益なサブミッションを実行するということも行っている。そういう形でなら、比較的ローコストで宇宙での実験が行えるからだ。

今回の宇宙ごみ除去の基礎実験は、そうしたサブミッションの一つが失敗したに過ぎないのだが、それが単独のニュースとして伝わると、ネットでも世界中に拡散され、あたかも「こうのとり」6号機全体が失敗であったかのような印象となってしまったことを、上記記事では嘆いているのだ。

似たようなことは、最近、他にもあって、例えば、福島第一原発2号機の内部をロボットで探索したところ、毎時530シーベルトというこれまで計測したことがない高い放射線量を計測し、まもなくロボットは動けなくなったことがニュースで流れたのだが、

福島第一原発2号機の放射線量が過去最悪を記録か。人なら数十秒で死に至る毎時530シーベルトと推定|ギズモード・ジャパン

まずはこちらの記事などは、「放射線量が急激に上昇した」という間違ったニュースを流してしまっている。
そもそも、今回、原子炉内部の、これまで到達したことがなかった中心部にロボットを到達させ観測したのだから、同じ場所での過去の計測履歴はなく、「従来に比べて放射線量が急激に上昇した」という表現は明らかにおかしいし、その後の記事の表現も、福島第一原発の状況が以前より悪化しているかのような表現になっているが、実際には、原発外で計測される放射線量には何ら変わりはないのだ。
今回のニュースの本質は「ロボットをより原子炉中心部に近付けたところ、今までより高い放射線量を計測した」という当たり前のことを書いたに過ぎないのに、それが重大な問題があるニュースであるかのように書いていることだ。

まずいのは、「ギズモード・ジャパン」のような有名なニュースサイトから、こうした誤報が出ると、それが真実としてすぐに広まってしまうこと。

福島原発内で高い放射線量、中国外交部が日本への渡航に注意喚起 - Record China

中国系の報道では、「上のようなニュースを受けて、中国外交部が日本への渡航に注意喚起を行った」というタイトルを掲げてニュースを流したのだが、中身を読むとビックリ。

定例の記者会見で、報道官が自らそういった訳ではなく、記者から「東京電力が最新映像を分析した結果、2号機の原子炉格納容器内における最大放射線量が毎時530シーベルトと推定したことが報じられた。人間が被ばくした場合に数十秒で死に至る放射線量とのことだが、中国側はこの件を憂慮しているか。中国人の日本渡航に影響するか」との質問を受け、報道官は、「中国は福島の放射能漏れ事故による影響について特に注目し続けており、たびたび日本政府に対して速やかに関連処置を施し、事故の後処理をしっかり行うよう求めてきた」とし、「いかにして有効な措置を取り、事故の影響を消し去るかについて日本政府が責任ある説明をしてくれることを望む。これは日本国民に対する責任のみならず、近隣国民や国際社会に対する責任だ」と述べたに過ぎないのだ。
この報道官の発言は、福島原発に関して、事故直後から中国が発言してきた内容の繰り返しに過ぎず、今回のニュースに関しては何も言及していない。

実際、この後、日本政府から中国政府に対し、この報道に関する確認を行ったところ、中国からは新たな発言はしていない、という回答が返っており、このRecord Chinaの記事は完全に(意図的な)誤報だと言える。

そして、この記事も、「中国は日本への渡航を禁止した」というように誤ってネットで拡散されしまった。

いずれの報道も、科学技術に無知な記者が、専門家に内容をよく確認もせず記事を書くことや、相手の言葉尻を最大限自分の都合のいい方向に捉えて記事を書く習癖が、誤報の最大の要因に思える。
とはいえ、底辺の記者にまで、正しい科学知識を求めるというのは、現実的には無理だ。

となると、報道関係者に伝える側が、伝え方をもっと工夫する必要があるのだと思う。

最初の実験失敗のニュースにしても、単体で「宇宙ごみ除去実験」のことを伝えるのではなく、「こうのとり」6号機自体の本来の目的とその成果をしっかり伝えた上で、単なるサブミッションの失敗に過ぎないという、ニュースの位置づけを明確にすべきだったのだろう。

後者の福島原発に関する広報発表にしても、原発の外の放射線量は変わっていないことは説明しているのだが、炉内部の放射線量に関し、独り歩きしやすい単なる数値だけを伝えたことで、それ以外の情報が記者の頭からぶっ飛んでしまったようだ。

これに対しては、数値だけ伝えるのではなく、原子炉内の絵を見せて、今まで行ったことがあるポイントとその放射線量を示した上で、今回、新たにこのポイントまで進むんだところ、こうした放射線量が計測されたという風にビジュアル化した説明をすれば、大きな誤解は生まなかったのだろうと思う。

こうした科学技術関係の一般へのプレゼンって、日本は概して下手なのは間違いない。
これからは、「ネットではどう曲げて伝わる可能性があるか」も頭に入れて、報道発表を行う必要があると思うな。

今回の福島原発の報道に関して、もう一つ報道陣にお願い。
私自身、福島原発の事故を起こした東電は、一度、倒産して資産を全部精算したうえで、出直すべきだと思う。
福島原発の地震対策について、指摘され続けていたにもかかわらず手を抜き続け、「原発は安全」とウソをつき続けてきた東電経営陣には大きな責任があるからだ。

しかし、今回のような炉内部の状態把握を行う活動は、東電がどういう形になろうと、今後炉を解体し廃炉するには、絶対に必要なことだが、世界で誰もやったことがない例のないことでもあるのだ。
それをやる彼らに、福島原発を起こした責任をなすりつけるのは、お門違いもいいところ。

ロボットがすぐに壊れるのも、内部状態が本当に想定外で未知の世界だからだ。科学者、技術者だって、発生して分かった問題は対応を取ることができるが、初めてのことを全部予測して対応するなんて不可能。

それを、「ロボットがすぐに壊れた」と留飲を下げることが、一体原子炉の解体に、何の成果を生むのか?
「解体なんて無理」と、大した知識もない人間が外から騒ぎ立てるのは気楽でいいだろうが、本当に「解体なんて無理かどうか」自体を論理的に結論付けるためには、彼らの地道な活動と、それから取得できる情報がどうしても必要なのだ。

そして、彼らは、今も、これまで誰もやったことがないことを、外から文句ばかり言われながら、黙々とやっている。
その活動で、何か少しでも失敗やトラブルがあれば、馬鹿が単純なミスをやったかのように、何倍にも大きく伝えられるだけなのに。

そうした報道は、彼らの活動を阻害し、廃炉への道を遠ざける方向にしか働かないにも関わらず、止むところはない。

報道の方は、福島原発事故で、本当に糾弾されるべきなのは誰なのか、改めて考え直して欲しいと思う。

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